夢現の狭間(はざま)──サイバー茶会

 「これは千野利久さんがプロデュースしたサイバースペースですがな、環境演出だけではなく、飲食も会話もできるようになっている。いわばサイバー茶室です わ。建物は簡素軽便を旨とし、これの場合は全部紙、難燃加工した再生紙でできております」 (第101回)

 これまでは余りに「変わっていない」ことにツッコミを入れてきたわけだが、反対に「そう簡単には変わらないもの」もあるはず。茶会の流儀などは、その最たるものだろう。村田珠光以来、400年以上に亘って完成した形で受け継がれた伝統が、たった20年くらいで、ここまで訳のわからん変貌を遂げるはずもなかろう。


夢現の狭間(はざま)──議論の風

 「第一、これからの産業情報省は、昭和型の行政指導を目指すべきか、自由競争を徹底すべきか」

 織田の言葉は、そのまま漢字混じりの文章になって前の液晶画面に出た。音声入力装置を働かせたのだ。(第112回)

 マウスもないのに「音声入力装置」はあるのか、21世紀。まさしく昭和の学習机の引き出しに、いきなりドラえもんが現れたような驚きである。こんな便利なものがあるなら、パソコンも音声起動にすればええやんか、いちいちキーボードをいじらなくても。

坂井さんの車にもパソコン付いてるだろう。この画面をネットして、じっくり読んでもらえ」(第112回)

 「この画面をネットして」!! どーいう状態のことを言っているのだ!?

「局長、畏(おそ)れ入りますが、車内のコンピューターに電源入れてくれますか。こっちで打った質問文を送りますから、じっくり読んで下さい」(第113回)

 ・・・と、電話で言っているらしいのだが。20年経っても、モバイル端末は移動体通信機器と別々になってるのか? 通信インフラが整備されて、回線なんか繋ぎっぱなしになってるんじゃないの?


夢現の狭間(はざま)──季節の変わり目

「お父さんの名がインターネットに出てるよ」(第115回)

 始めてツッコミ入れた部分である。自己情報に敏感な中央官庁の役人・・・ならば、娘に教えられる前にチェックするのが普通だろう。ネットサーフィン中にたまたま見つける方式が、20年後もなお続いているという不思議。プッシュ方式の情報収集技術が、ほぼ実用レベルに達していることを、この作者は全然知らないらしいのだ。

木下はパジャマ姿のまま娘の部屋に突進、パソコン画面を覗(のぞ)き込んだ。そこには(第115回)

 で、こういう場合、我々がノーマルに発想するのは、木下父が自分のパソコンを起動して、娘のパソコンにネットワーク接続して、その事実を確認するだろう、ということだ。

「×××」の部分の文字を見るためには自分のパスワードを入れて料金を支払わねばならない情報業者のホームページだ。

 「これ一頁(ページ)三千円か、無茶苦茶高いな」

 木下はそういいながらも、パスワードを打ち込んだ。(第115回)

 産業情報省の木下和夫調査課長は、総会屋まがいの情報業者が運営するいかがわしいアンダーグラウンド情報ページにアクセスするための、IDを持っているらしい。

「だって、バーチャル・ガバメントのホームページに広告が入ってたんだもの……」(第115回)

 そして産業情報省の若手勉強会「バーチャル・ガバメント」は、この業者から広告料金をもらっているのだ。信じていたのに・・・本当は黒社会と、こんなパイプで繋がっていただなんて。

高校生の間でも、バーチャル・ガバメントがナウいのである。(第115回)

 ナウいか。

 十年あまり前から、インターネットでこの種の憶測情報を発信、有料で読ませる「情報屋」が急増している。多くは企業にたかる総会屋崩れ、情報誌の購読料や 広告掲載が厳しく取り締まられるようになったので、有料インターネットの購読を押し売りする方に切り換えたのだ。これだと通信料と一緒に経費で落ちるので目 立たない。 (第117回)

 前に会社のホームページをFTPでアップロードするとき、vegaではちと遅かったので、ダイヤルQ2のInterQを使ったら、次の請求の時にいきなり経理からツッコミ入れられたぞ、私は。ましてや「総会屋崩れ」の運営する「有料インターネット」の購読料を、NTTや東京インターネットが代行集金してくれるようになっているとでもいうのか。

 「いろいろ伝言が溜(た)まってますよ」

 課長用の机の上を指差した。

 「永山課長から、すぐ電話を欲しい」

 「堂本調査官から、機械産業局長室に電話を」

 「明智次長、手が空けば官房長室へ来て下さい」

 「永山課長、事務次官室にいる」

 役人歴二十年の木下和夫には、これだけのメモでおよその動きが分かる。(第118回)

 パソコン使えよ。


夢現の狭間(はざま)──ドリームチーム

 これだけの手続き行事を終えると、木下は、机の書類や私物の整理をした。書類の大半はデジタル化してコンピューターに入っているので、昔にくらべると廃棄 する紙の量は少ない。それでも会議資料や国会議員説明用のファイルなどが、机の上にも引き出しにも溜(た)まっている。

 この一年間に受け取った名刺も千枚を越える。コンピューターに入った私的なメモや知人の名を消す作業にも手間がかかった。(第124回)

 メモ用紙を1枚1枚破る光景の、単純な置き換えなのであろう。最新OS(?)の「ウェーブ2010」(・・・って、この時が2017年だから、7年間もバージョンアップしてないのか、2010)は、物語を読む限りではDOSとしか思えないから、DELコマンドで一つひとつ消していかなければならないのかもしれん。FDとかのファイラー使えば早いと思うんだけれど。いずれにしても、tempフォルダやcacheフォルダ(あ、ディレクトリか(笑))はこまめに整理しておこう。

木下は昼食休みの小一時間、机の引き出しとロッカーとコンピューターに取り組んだ結果、私物を段ボール一つと風呂敷(ふろしき)包み二つとフロッピー二枚 にまとめることができた。(第124回)

 「書類の大半がデジタル化」しているというのに、たったの2.88MBに収まるのか、木下課長の私物。ところで、産業情報省には省内LANは敷設されていないのか? 普通そういうファイルって、サーバの「木下私用フォルダ」に置いておかないか?

 木下は唇を噛(か)んだ。これからはじめる「ドリームチーム」では、この国に夢を甦(よみが)らせねばならぬ、という思いが湧(わ)き立(た)って来た。(第126回)

 内容の方にツッコむつもりはなかったのだが・・・・・・「21世紀の楽市楽座」「魅力ある国創り」も、結局官僚主導で実現していくんすね。規制緩和・自由化を目指す護送船団(笑)

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