怪獣代理戦争
緯度38大作戦

大怪獣ヨンガリ
VS
大怪獣ブルガサリ


 北緯38度線を挟んで対立する二つの国家、大韓民国と朝鮮人民民主主義共和国。歴史が語るように、この二つの国家間にも、その影でうごめくものがあった。かつては、アメリカ対ソ連・中国という、二大経済体制の対立が、熱い戦争となった悲劇もあった。

 ここで取り上げるのは、そんな深刻な話題ではない。邦画史を語る上で欠かすことのできない二大勢力の対立、それが37度線を境に、17年の年月を経て朝鮮半島で代理戦争を繰り広げたことは、よほどの好事家でなければ知られていないだろう。すなわち

1967 大怪獣ヨンガリ(韓国)・・・・・・エキス・プロダクション

1984 大怪獣ブルガサリ(北朝鮮)・・・・・・東宝特技スタッフ

という、これはまさしく

ガメラVSゴジラ

のという2大怪獣の代理戦争だったのだ。


大怪獣ヨンガリ

 大映ガメラの造形スタッフが韓国に招かれて製作した単体怪獣映画。韓国を襲った大地震により目覚めた地底怪獣「ヨンガリ」が、地上で猛威を奮う。日本製怪獣映画の伝統を踏んで、韓国軍や在韓米軍の攻撃にも耐える強靭な肉体を持つヨンガリだったが、化学工場を襲ったことでアンモニアに弱いことが判明して倒される。

 英語版のビデオ"Yongary Monster from the Deep"で見たので、ストーリーのディテールはイマイチよくわからん。特に前半の宇宙ロケットと後半の怪獣との繋ぎが。アンモニアに弱い、というが、早い話がアレルギー体質。薬剤を浴びると爛れて痒くなってしまうのだ。全身かきむしる怪獣の演技など、『大巨獣ガッパ』の、「嫌な音を我慢する演技」に負けず劣らずの異常演出である。しかも、ディスコ風「アリラン」に合わせて 踊ったり、ウルトラマンタロウか?

 ヨンガリの弱点を見つけだすのがガキ、というのも大映センス爆発である。余分なギャグ演出も多数、最後は下血して絶命するヨンガリに、韓国の反日根性を見た気がした(妄想だってば)。


大怪獣ブルガサリ

 中野昭慶特撮監督以下、1984年『ゴジラ』のスタッフが極秘裏に北朝鮮に招かれて製作した、本格怪獣映画。監督はこの映画を最後に北朝鮮から脱出した申相玉真由美の項参照)、実質的なプロデューサーは金正日だったと言われている

 中華帝国の支配下に置かれていた朝鮮で叛乱が勃発。首謀者と目された老人が捉えられ、獄中で非業の死を遂げるが、彼が密かに創り、呪いをかけた「ブルガサリ」の土人形が、ヒロインの血を受けて生命を持つ。鉄を食べて成長するブルガサリは見る間に巨大化、不死身の味方を得た反乱軍は、政府軍を打ち破って紫禁城に攻め上り、ついに皇帝を滅ぼす。平和が戻り役目を失ったブルガサリは、献身的なヒロインの祈りを受けて、元の土の塊に還っていく・・・という、民話を題材にとり、かなり『大魔神』の影響を受けた作品である。

 時代も時代だが、『ヨンガリ』に比べればはるかにマトモな作品である。共産圏にとっては、映画は重要な政策宣伝手段であり、本作も北朝鮮軍兵士を大々的に動員してものすごい迫力を生み出している。本作のためだけに作られた特撮スタジオに、円谷英二存命中でも考えられないような巨大「紫禁城」のセットなど。中野監督得意の火薬の使用量もハンパではない。画面いっぱいの業火の中を歩み出てくる「ブルガサリ」の巨体・・・よく生きて帰って来れたな、薩摩剣八郎、という感じである。

 現在では韓国すら出て、ハリウッドを活動拠点にしているという申監督、いやいや作っていたとは思えない出来栄えであった。無論、北朝鮮では「裏切り者」の作品として封印扱い。日本ではこっそりビデオも出て、今年、97年には正式公開されるという噂もある。ちなみに筆者が見たのは、十三のサンポード・アップル・シアター。どさくさに紛れた上映であった。



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