ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団
日タイ合作のウルトラマン・ムービー。当時のウルトラマン映画としては、ほぼ全シーンを新撮した(唯一、ウルトラマンタロウの第一話から誕生シーンだけはバンク・フィルムを使用している)という意味においては画期的な作品である。ただし、日本公開は大きく遅れた。いや、遅れたと言うよりは、はじめは日本国内で公開するつもりはなかった、という方が正解かもしれない。
「怪獣だったら何でも殺しちゃうウルトラマンなんて嫌い!!」
と、「まぼろしの雪山」で雪ん子は叫んでいたが、この映画の場合、何でも殺しちゃうのは怪獣だけではない。
監督は東條昭平という人。私の知っている東條昭平という監督は、日本人の心性を鋭く抉った『帰ってきたウルトラマン/怪獣使いと少年』を撮った人だが、『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』の同姓同名の監督とは、同一人物ではないに違いない(笑)。
舞台はタイ。異常気象による干ばつで地表の生物が瀕死の危機に曝されていた。タイ一のロケット工学の博士は、この干ばつの危機から地球を救うため、数百機の「人工降雨ミサイル」を打ち上げる計画を着々と進めていた。試作機による実験は成功、意気に乗る科学者をたしなめるのが、キャバクラのねーちゃんみたいに濃い美人秘書。
「科学ばかりに頼っていてはだめ。もっと仏様を信じないと…」
ああ、大乗仏教。我々の認識と画面で展開される物語との間を走る活断層に、ピシリと亀裂が入る瞬間である。
さて、この秘書の弟というのが、物語の主人公である弁髪の信仰少年コチャン。彼は近所の少年たちの宗教的リーダーであるので、この日も廃寺で雨乞いの踊りを踊っていた。ところが、そこに現れたのが仏像泥棒の一群。自らの実力の程も考えずに行動するコチャン少年は、賊の銃弾にあっという間に額を割られて絶命する。
終。
いや、ここで終わってはウルトラマンが出てこない。と言っても、これまでの展開で、ウルトラマンが出てくる余地はちょっとなさそうだが。
コチャンの死を悼む子供たち。だが、彼の勇気ある行動を、ずっと見守っていた天空の目があった。仏様か? 当然そうだが、この仏というのが、どういう訳かウルトラの母の形をしているのだ。ウルトラの母もコチャンの死を悲しみ、彼に新たなる命を与えるべく、ウルトラの国へと彼の体を引き上げるのだ。
超獣バキシムの登場シーンのごとく空が割れ、そこから伸びるウルトラの母の巨大な手。タイ国大パニック。
ウルトラの星では、ウルトラの母、ゾフィ、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンAが、コチャンを蘇生するために気合いを入れる。ウルトラマン・ジョーニアスと共に、最近のウルトラ兄弟関係資料からは完全にオミットされている、ウルトラマン・タイランド(仮称)の誕生である。
混沌とした天地、その時空の裂け目を衝いて、ファイティング・ポーズも凛々しく生まれたまがまがしき生物……その名は、「白猿ハヌマーン」!!
ハヌマーンとして地上に帰ったコチャンの最初の使命は、干ばつに苦しむ地上を救うこと……では、もちろんない。仏像泥棒退治である。干ばつなんか放ったらかしていても人間が死ぬだけだが、仏像泥棒を放置しておいては、仏様の権威が死ぬ。この物語は、そういうプライオリティに貫かれているのである。
ところで電エースは海辺のナンパ小僧と等身大で戦ったが、獅子は一兎を追うのも全力を尽くす(猿だが)と、仏教典に教えのある通り、ハヌマーンは身長40メートルで仏像泥棒に迫る。
「おらおら〜、どこまで逃げられるつもりだぁ〜?」
「逃げても無駄だぞぉ〜」
二又一成の声で暴走族みたいな台詞を吐きつつ、悪人を追いつめ、踏み潰し、握り潰す正義のヒーロー、ハヌマーン。
「仏様を大事にしないやつは、死ぬべきなんだ!!」
わあああ!! 正義として、ヒーローとして、これほど強烈なインパクトを持つキメ台詞を吐いたキャラクターもいないだろう。
その後、コチャンの弟分を助けるために展開される、何度見てもよくわからないタイの昔話エピソードが入り、その後、やっとハヌマーンは干ばつ解決に向けて動くのである。
宇宙を行くハヌマーン。その先に、馬車を御する親父一人。
「太陽よ!」
ハヌマーンが言う。そうか、親父は太陽だったのか。
「何だ!?」
「お前は最近地球に近づきすぎている! 暑くてたまらん!!」
「そう言えば、そうだ」
「頼むからもう少し離れてくれ!!」
「そうしよう」
……それで終わりかい!! ロケット工学博士の苦労はどーなる!! さらに言うなら、タイでは未だに「地球の周りを太陽が」回っているのね。
ハヌマーンの努力によって(努力してない)、地球は滅亡の危機から救われたのだが、そんな事実は全然知らない博士は、仏様を信じようともせず科学に盲信して計画を強行しようとしていた。だが、信心の足りない彼の計画が成功するはずもなく、ロケットは次々と大爆発。そうして、この爆発に導かれるかのように、地底に眠っていた怪獣たちが目を覚ましたのだ。
仏様を信じなかった科学者は、「彗星がバアァァァァ」のカミーユ状態になって死亡。目覚めた五大怪獣は、ロケット計画の原子炉(どう見てもガスタンクにしか見えない)に迫る。これが爆発したら、タイ国はおしまいだ。タイ空軍のファントムが怪獣迎撃に出るが、あえなく全機撃墜される。
どうなるタイ国! どうする仏教!!
仏教に後退なし!! 颯爽と立ったハヌマーン。だが、5対1ではちと分が悪い。嗚呼、蘇我氏が物部氏を倒して以来、1300有余年、ついに仏教は怪獣軍団の前に平れ伏すのか!? 世はまさに末法、神も仏もないのか!?
だが、キリスト教やイスラム教とは違い、仏教は多神教である。一粒の米にも七人の神が宿るアニミズムの勝利、大乗仏教の仏典に、「敗北」の2文字なし!!
天を翔る6人の、仏の仲間の勇姿。
ゾフィ!
ウルトラマン!!
ウルトラセブン!!!
ウルトラマンジャック!!!!
ウルトラマンA!!!!!
ウルトラマンタロウ!!!!!!
ウルトラ6兄弟+ハヌマーン。7対5で形成は大きく逆転。怪獣どもを文字通り血祭りにあげ(例えばドロボンなどは、生きたまま両腕を落とされ、最後は究極奥義で首を引き抜かれる……アメリカじゃ18禁だ!!)、残ったリーダー格のゴモラには、7対1の猛攻。逃げるゴモラの両手両足尻尾をウルトラ6兄弟ががっちりと押さえ、ハヌマーンが棍棒でタコ殴りにするシーンなど、中学生男子のいじめである。ここまで来ると、たとえゼットンへの復讐戦を胸にプロレス入りした前田日明でさえも、たまらずこう叫んだことであろう。
「ウルトラマンなら、何をしてもいいのか!?」
言われなき「宇宙人」の疑いをかけられた少年を、身を呈して守ろうと奔走するMAT隊員・郷秀樹の苦悩を描いた「怪獣使いと少年」も東條作品ならば、信仰心の薄い盗賊を圧倒的パワーの差をもって虫けらのように叩き殺す本作も東條作品。映画作家に信念なんかない方が良いことを知らしめられる『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』である。と、同時に「イスラム教のイスラムって、絶対服従って意味なんだよねー」と、偏見を持ってアラブ文化圏を語る我々の盲を十分恥じるべきだ。「悪を許さぬ勇気を持て」という『スーパージャイアンツ』の言葉に導かれて、脚の不自由な悪役から松葉杖を奪ってドツキ倒すような、視野を狭めなければ到達できない正義の存在を、我々は身近なものとして実感すべきであろう。そう。
仏教だって、十分心は狭い!!
『仏教戦隊ブッダマン』を見よ。
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全編の4/3が『ジャンボーグA』からの流用フィルムで構成され、この番組の余り熱心な視聴者ではなかったオレにとってはかなり理解に苦しむことになった。フィルムの編集もかなり乱暴かつ強引で、ジャンボーグA初登場で対峙する敵がいきなりニセジャンボーグAだったり、ジャンボーグ9が出動したはずなのに、次のカットでいきなりジャンボーグAにすり替わっていたり、タチバナナオキがデモンゴーネにとっ捕まって逆さづりにされてるのにジャンボーグAが登場したり、そのデモンゴーネも「そこにあった偶然尖った物に刺さって死ぬ」シーンのすぐ次に、平然と登場したりと…。あるいは、タイ語ナレーションが聞き取れていれば、それなりに辻褄の合う理屈が説明されているのかもしれん。「仏様の慈悲心」とか。
基本的なストーリーは、グロース星人が地球侵略を企み、これと戦う「ジャンボーグA」「ジャンボーグ9」および「PAT日本支部」ってな感じで、グロース星人は月面を拠点として「地球焼却レーザー砲」を設置(『ダイヤモンドは永遠に』か?
って、そうなんだろうけれど)、その芯に使うためにジャンキラーがタイの寺院から仏舎利を盗み出す。仏舎利を取り戻し、ついでに地球を救うため、辮髪の信仰少年コチャンとPATタイ本部が、科学の力と信仰心で2体の仏教ジャイアントを開発し、ジャンボーグAと共にデモンゴーネに立ち向かうのだ。
ジャイアントは初代が寿老人みたいなやつで、2代目が不動明王みたいなの。寿老人がジャンキラーとバンコックの街でしばき合うシーンは、もちろん本作オリジナル。オープンに広大なセットを組んでの撮影だが、カメラ固定で迫力皆無、ジャンキラーのエキセントリックな性格設定もあいまって、まるでやる気のないインデイ・プロレス団体の前座試合を見ているかのよう。
不動明王さんはラストの月面バトルを中心に、ジャンボーグAとタッグを組んで大活躍…と言うか、弱すぎ、ジャンボーグA。ノリとしては『ゴジラ対メガロ』のジェットジャガーみたいな雰囲気かも。ま、正しい心が生みだしたお不動さんに比べれば、人間の操縦するエメラルド成人のサイボーグなんか、魂の入り方が足りんよね。
めでたくデモンゴーネを打ち倒し、仏舎利を取り戻したお不動さん、地球に帰還する際に投げかけるセリフが
「アリガト、ジャンボーエー。サヨナラ、ジャンボーエー」
…って、ジャンボーグAが正しく日本産だって認めてるじゃん。
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