それ行け! ガッカ特捜部

高田理美「聖ポーリア女学園」(まんがタイムラブリー99年3月号)より


 例によって就職活動の季節である。インターネットの広がりというものは恐ろしいもので、去年の秋から資料請求のメールが来るわ来るわ、ウチみたいな聞いたことのない会社に対して、現在(99年2月末)までに5,000人以上の学生から会社資料を請求されている。リクルート・ナビなんかで、メールの一括送信機能を使っているんだろうけれどさあ。君ら、どの会社に資料請求したか、ちゃんと覚えているのだろうねえ? R大学のKくん、君にはとっくに資料を発送しているはずなのだが、なんでその後も資料請求を繰り返すのか? 重複データをチェックする身にもなってくれ。

 てなわけで、アプローチのあった学生のデータを管理している訳なのだが、気になるのは「訳のわからん学部・学科」の多いこと。私は文系人間なので、理系の細かい学科については何とも言えないけれども。

「日本アルプス国際大学情報家政学部物理農業学科ね」

 こういう学歴が実際に存在するわけではないだろうが、「カタカナ・国際・情報」と、うさん臭さの三拍子揃ったいい仕事である。学校側からすれば、「法学部」とか「経済学部」とかの、「従来の枠を越えて新たな学問を創造する」ことを目的としているのだろうが、えてしてこういう聞いたことのない学部・学科の学生に、こちらも聞いたことがないものだから

「で、結局どういうことを勉強してるの?」

と質問したところで、マトモな答えが返ってきたことがないぞ、教授会の皆さん。アルバイトやサークルの話は生き生きとしているけれどな。

 そこで、2000年度新卒採用活動の学生イジリは、「聞いたことないしうさん臭い」学部・学科を紹介しよう。


コクサイ学科は赤字覚悟

国際コミュニケーション学部・経営環境学科

国際コミュニケーション学部・文化コミュニケーション学科

国際学部・経営情報学科

国際学部・国際学科

国際学部・国際社会学科

国際学部・国際文化学科

国際学部・比較文化学科

国際関係学部・国際関係学科

国際関係学部・国際文化学科

国際経営学部・国際経営学科

国際経済学部・国際経済学科

国際言語文化学部・国際言語文化学科

国際交流学部

国際文化学部・言語コミュニケーション学科

国際文化学部・国際関係学科

文学部・国際社会文化学科

法学部・国際企業関係法学科

 これで全てではないのだが。だいたい、「国際」な学科を出ているからといって、英語その他の外国語がしゃべれるわけでは全然ない。夏休みに授業の一貫として、2週間ぐらい海外「留学」しているケースはザラだが。ホームステイですらない「日本人学生だけの宿泊所」で過ごすその期間、コミュニケーションに困ったことはないんだってさ。

 えーと、「国際関係学部・国際文化学科」と「国際文化学部・国際関係学科」とでは、やってることはどう違うのだろう? 「国際企業関係法学科」なんか、講義が1コマもあれば十分という気がするが。

 「国際言語文化学部・国際言語文化学科」・・・自己紹介の時点で舌を噛みそうである。『天皇・皇后と日清戦争』『皇室と戦争とわが民族』『日米嫁入婿取入替取替合戦』なんていうタイトルの映画を乱発していた新東宝が、「アンド・オブ・カンパニー」と言われていたことに因んで、こういう学部・学科は「アンド・オブ・学科」と呼ぶことにしよう、これから。


僕とエコロと校庭で

システム工学部・環境システム学科

デザイン工学部・環境デザイン学科

園芸学部・緑地環境学科

環境科学部・環境計画学科

環境学部・環境デザイン学科

環境理工学部・環境物質工学科

家政学部・環境情報学科

環境情報学部・環境情報学科

環境保健学部・環境保健学科

経営学部・国際経営環境学科

経済学部・市場環境学科

経営情報学部・経営環境情報学科

芸術学部・環境計画学科

理工学部・環境マテリアル学科

人間環境学部・環境理学科

生活科学部・生活環境学科

生活環境学部・食物栄養学科

生活環境学部・生活環境学科

生活環境学部・生活情報学科

 だから「環境理工学部・環境物質工学科」は「理工学部・物質工学科」と比較して、何がどう違うのかを学生にちゃんと説明できるように訓練しておくように、教授会の人。

 さっきの「国際学」というのもどういう学問なのかさっぱり判らなかったが、「環境学部」。守備範囲を明確にして欲しい。「情報」や「国際」「カタカナ」とのアンド・オブも目立つ「環境」関連学科は、昨今のブームに乗って、今や「エコロ・バブル」の様相を呈している。これから少子化に向かうニッポンで、こんなに訳のわからん学科を増やしてどうする?


Who are you? INFORMATION!

経営情報学部・経営情報学科

経済情報学部・経済情報学科

社会情報学部・社会情報学科

情報学部・経営情報学科

情報学部・経済情報学科

情報学部・情報社会学科

情報社会科学部・情報社会科学科

総合情報学部・総合情報学科

都市情報学部・都市情報学科

流通情報学部・流通情報学科

 くどいようだけれど「社会情報学部・社会情報学科」と「情報社会科学部・情報社会科学科」とはどう違うのか。両教授会の方々は、朝までテッテ的に論じていただきたい。

 文系学科「+情報」というのは、要するに「パソコンを使った講義、ありマス」程度の意味しかないらしい。


浜の真砂は尽きるとも、世にアンド・オブの学科は尽きまじ

社会学部・産業関係学科

発達科学部・発達科学科

不動産学部・不動産学科

経済学部・ビジネスマネジメント学科

経済学部・地域社会システム学科

経済学部・グローバルエコノミィー学科

経済学部・経済ネットワーキング学科

人間関係学部・人間関係学科

人間関係学部・人間発達学科

人間社会学部・現代社会学科

人間社会学部・人間形成学科

人間生活学部・人間生活学科

人間文化学部・生活文化学科

人間文化学部・地域文化学科

現代社会学部・現代社会学科

現代文化学部・現代文化学科

人文学部・環日本海文化学科

法学部・新聞学科

総合科学部・総合言語文化学科

総合人間学部・人間学科

総合管理学部・総合管理学科

総合政策学部・総合政策学科

地域政策学部・地域政策学科

 「人間」あり「生活」あり「総合」あり。「ネットワーキング」とか「グローバルエコノミィー」といった「カタカナ」あり。「不動産」や「新聞」といったミクロの次元を深く追求する味わい深い学科もある。18歳の冬、自らの進路に真剣に悩む受験生の前に、鮮やかなキャンパスライフを描いたパンフレットが現れる。「従来の学問の枠にとらわれず」「21世紀を担う国際人を育てるために」「新しい発想で学科を新設しました」・・・。

 別に新しい学科が悪いとは言わないし、その中では真剣な研究も行われてはいるのだろう。しかし、「情報家政学部・物理農業学科」を新設するときに、50年後、100年後にはたして、その学問がどう大成しているかの具体的なイメージを、指針を本当に描いていたのだろうか? 少子化に向かい受験生が減少していく時代、学校経営を守るために、目先の新しさ、名称の口当たりの良さで受験生の関心を引こうとは思っていないだろうか。あるいは、もっと辛辣に言えば、まるで中世カトリック教会の免罪符のように、「○○大学卒」ブランドの安売りを目的としていないだろうか。

 大学を卒業するということは、「学士」の認定を得るということである。本来なら、我々の履歴書には「○○大学卒」ではなく、「××学士」という資格を書かなければならないのだ。「物理農業学士」の資格に、学校には卒業生の一生分、責任を取る覚悟があるのだろうか?

 

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