会社のオッサンの唄

管理職必見



 「最近の若い者は・・・」というオッサンのグチが記された、史上最古の史料は古代エジプトの壁画かパピルスだそうだが。

 何度も言うが本業は人事なので、会社で取っている専門紙の一つが、タブロイド版8ページの、この『労基旬報』である。ある日の「天声人語」的なコラム「あんてな」に載っていたのが、この「指示待ち族」だ。

 最近の若い者は指示してやらなきゃ何もできないし、何もしない、というのが、おじさんたちのグチのトレンドだ。この言葉には、自主性がない、とか、マニュアル人間だ、という含みが当然あるのだろう。

 「ホワイトカラーとしては将来は期待できぬ」とは、言いも言ったりだ。私もどっちかと言えば、既に「若者」とか言っていられる年でもないのだが、こうまで一方的な主張を言われては、反論の一つもしたくなるのが若気の至りというものだろう。

 とりあえず、管理職のオッサンに質問だ。じゃあ、あんた、自分の部署の業務マニュアルが作れるのか?

 高度成長期、お国のためにバリバリ働いた世代なんか、会社ではほとんど絶滅している。今の管理職の大半は、団塊の世代でエレベーター式に自動的に役職に就いた連中ばっかりだ。モーレツ社員でもなければ、特別な知識技能があるわけでもない。最近、急速に普及し出したパソコンのキーボードを前に、筑波山麓四六の蝦蟇よろしく、たらりたら〜りと脂汗を流しているヒトタチである。若手社員を「バブル世代」と小ばかにするが、日本経済のバブルを、いつはじけるとも知らず膨らまし続けた方々だ。

 それにしても「指示待ち族」とは便利な言葉だ。完璧に「言ったモン勝ち」の世界だ。「指示しないと何もやらない」とはよく言った。オジサマたち、じゃあ、アナタタチは部下にまともな指示を出せるの?

 まともな指示とは。「何を、いつまでに、どのくらいの予算で、どのくらいの人材を使って」やればいいのか、という指示だ。あなたたちが「報告」で欲しがる「5W1H」というやつだ。そうそう、会社では「報・連・相」と言って、「報告」「連絡」「相談」を密にせよと必ず教えられる。ついでだから聞くが、「中間報告」「最終報告」はいつまでに出せばよいのか、何故その日までなのか、ちゃんと指示できる管理職が、今の日本の企業にどれくらいいる?

 これは現実に、私がしょっちゅう受ける「指示」とやらだ。例えば会社のホームページを作る時もこんな感じだった。「新しい仕事にチャレンジ」とかいう場合には、指示の漠然度が増す。要は、上司自身が、「何をやってもらいたいか」がわからないのだ。

 だから、ある程度の形を作って持っていってあげると、俄然目の色を変えて「具体的な指示」を出して来る。と言っても「てにをは」だの「文字の大きさ」だのが中心だが。抽象的な目的を自分の頭の中で具体化し、計画を立てて予算化する能力がないわけだ。これを普通「管理能力がない」という。「指示待ち族」ならぬ「報告待ち族」だ。「指示」と「報告」、どちらが先に来るべきか、「ニワトリ」と「卵」より結論は簡単だ。

 私的経験だけを根拠に罵倒されるのはタマランという向きもあるだろうから付け加えると、日本ではグループウェアが全然普及しないというのが証左だろう。メールで業務指示が出せないというのは、キーボード・アレルギーだけが原因ではない。「指示を具体化できない」「指示を文書で残したがらない」のは、紛れもなく指示を出す能力がないからだ。そう言えば、多くの会社で「報告」を文書で出させることをルール化しているが、その「指示」を文書で出すことを義務づけている会社は、その内どのくらいある?

 会社とは目的を有した組織であり、そのために社員は働く、とすれば、会社の目的を具体化して実行に移させることが「管理職」の唯一の任務だろう。その「組織目的の具体化」が、部下に対する「指示」として現れる。だから部下が「指示を待たないと仕事ができない」のは当たり前だ。一人一人が組織目的を勝手に解釈して、気ままに動いて会社が成り立つか? 指示を得ないで、しかも組織目的に合致して動ける人間がいたとしたら、それは社員ではなく「経営者」だ。「指示待ち族」を嘆く管理職に聞くが、あんたの部下は、そうやって動けるほどに経営情報を与えられているのか? 部下に対して訳の分からんグチをこぼす前に、あんた自身の仕事をちゃんと全うすれば?

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